虞

(怖くて)
なにがこわいの

(怖くて)
どうしてこわいの

(仕方ないんだ)
ここにいるのに

声

銃｢声｣とはよく言ったものだと、その女は言った。

たとえば怒りに、たとえば歌に、銃にはきっと｢想い｣があると。

｢マリア｣の声はと尋ねたら、少しの沈黙の後、ぽつり｢悲鳴｣と小さく低く。

神と教会の名を借りた冷たい殺人機は、己のさだめを歎いてか。

いつも躊躇いがちに引き金を引く、あの細い指の心を映してか。

引き金を引く指が俺のものになっても。

罪の子を抱く黒い聖母は、また闇夜に悲鳴をあげる。

祈るように。

足掻くように。

父

一番最後の子供たち

愛しく憎い君たちに贈る

最初で最後の呪いの言葉

別

未だ世界は汚染途中

白濁した泥の溜まりに方舟を浮かべ

声も届かぬ対岸の君に

ただ手を振って　そして願うよ

どうか光を　絶えぬ希望を

神の袂で得られますよう

見ていておくれ

僕が世界で　白い世界で

たった一人で立つ様を

灯

嘆け人の子蝶のゐろ

影さへ在らば白も緋也と

申せ申せ

足を獲られよ忍びし蛙