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脳害倉庫
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あぁ、死ぬなと思った。

死にたくないと絶望する訳でも、また反対にこれで楽になれると歓喜する訳でもない。

自分はこれから死ぬんだろう。

間もなく自分に訪れるであろう未来の切れ端を、折れた牙で噛み締めていた。

だって、どこもかしこも動かないのだ。

脚も耳も尻尾も。

何日か前まではまだゼヒゼヒ耳障りな音を立てていた喉からは、もう何も聴こえない。

その何日か前、空腹よりも喉の渇きに耐えられずにドブ水を啜ったら夜に吐いて、もっと喉が渇いた。

その次の日に、フラフラする脚で何か口に入れるものを探していたらマンホールに落ちた。

したたか全身を打ちつけ、前脚がおかしな方向に曲がって牙が折れた。

口の中に生温くしょっぱい味が広がった。

何日かぶりの味のあるもの。

思わずこくりと飲み下すと、胃から得体の知れない物が逆流してきて、赤の混じった液体を吐き出した。

ひどく咳き込むと涙が出てきて、まだ自分の身体に水があったのかと妙に感動を覚えた。

鼻が乾いているのはずっと前から気付いているけれど、舌で潤す気も起きない。

いつか見知らぬ野良犬に千切られた耳と尻尾はどうなっているだろうか。

どうでもいいか。

もう痛みも無い。

何だか何もかもが億劫だった。

コンクリートに押し付けた耳にかすかに感じる規則的な震動は自分の鼓動だろうか。

無駄だよ。

いっそ哀れむような気分で肉体の最期の足掻きを嘲笑った。

かわいそうにね、分からないのか?

僕はこれから死ぬんだ。

天国へ行くんだよ、いいだろう?

そんな所へ行ける保障はないし天国なんて見たことも無いくせに、誰に対してか分からない無意味な見栄をはった。

きっと花が咲いている。

自分は笑いながら匂いを嗅ぎ、花びらに溜まった甘い露を舐める。

そして自分はきっと



遠くなる意識の淵で、頬に冷たい水が落ちた気がした。
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